闇
2002年5月7日2時をまわった頃、僕は灰皿を片手に持ち、
煙草に火を点けてベランダへ出た。
都会の夜は静かだ。
柵にもたれかかり深く煙を吸い込むと、その静けさが身にしみた。
妹を愛してしまった男の話を書いていた。
愛犬を失った頃の回想シーンを書いていてどうにもやりきれず、夜の闇に身体を溶け込ませたくなってしまった。
向かいのマンションの明かりは全て消えている。
通りすぎる車もまばらで、時折早いスピードで
ヘッドライトが駆け抜けてゆく。
いつまで経ってもこの煙草の味には慣れない。
LUCKY STRIKEのメンソール。
吸い込む度に脳の奥に痺れを残す。
眠たくはなかった。
身体は激しい疲れを訴えている。けれど頭は澄んだ湖みたく冴え渡っている。
ふいに唇に、何かが触れた。
細かい霧のひとかけらのような雨粒である事に気付くまでそう時間はかからなかった。
空を仰ぎ見るとひとつ、ふたつ。
2度目は頬に。3度目はまぶたの上に。
雨が音もなく、僕に降り注ぎ始める。
煙草の煙と混じり合いながら。
音楽はAsh。前向きな歌詞と切ないビートのせいで身体の奥にも火が灯される。
今は目を閉じてその嵐をやり過ごすしかないだろう。
ドラッグじみためまいを抱え続けて。
煙草に火を点けてベランダへ出た。
都会の夜は静かだ。
柵にもたれかかり深く煙を吸い込むと、その静けさが身にしみた。
妹を愛してしまった男の話を書いていた。
愛犬を失った頃の回想シーンを書いていてどうにもやりきれず、夜の闇に身体を溶け込ませたくなってしまった。
向かいのマンションの明かりは全て消えている。
通りすぎる車もまばらで、時折早いスピードで
ヘッドライトが駆け抜けてゆく。
いつまで経ってもこの煙草の味には慣れない。
LUCKY STRIKEのメンソール。
吸い込む度に脳の奥に痺れを残す。
眠たくはなかった。
身体は激しい疲れを訴えている。けれど頭は澄んだ湖みたく冴え渡っている。
ふいに唇に、何かが触れた。
細かい霧のひとかけらのような雨粒である事に気付くまでそう時間はかからなかった。
空を仰ぎ見るとひとつ、ふたつ。
2度目は頬に。3度目はまぶたの上に。
雨が音もなく、僕に降り注ぎ始める。
煙草の煙と混じり合いながら。
音楽はAsh。前向きな歌詞と切ないビートのせいで身体の奥にも火が灯される。
今は目を閉じてその嵐をやり過ごすしかないだろう。
ドラッグじみためまいを抱え続けて。
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