家族愛と恋愛感情の狭間で。(2)
2003年4月19日ずきりと胸が音を立てる。
「どうかな」
「んもう、はぐらかしてばっかり」
唇を尖らせ軽く深久がにらむ。
「もういいじゃん。やめようよ、その話は」
「あのね・・・」
何か言いかけて、深久は口をつぐんでしまった。
「何だよ?」
「・・ううん。ねえ、ケーキに火をつけよう」
「ああ」
俺はポケットからライターを取り出してロウソクに火を灯し、照明を落とした。
ケーキのシルエットが幻想的に浮かび上がる。
ささやかな声で歌を唄い、主役の代わりに2人でロウソクを吹き消す。
深久より沢山の数を消してやろうとハイスピードで息を吹きかけていると、深久も負けじと勢いを早めてくる。
最後の一本をお互いが奪い取るように吹いたとき前髪が触れ合い、近い距離から微笑みを交わし合った。
ロウソクの火が消えてもほの明るい光が窓から差し込んでいた。
深久もそれに気づいて窓辺に近づく。
「月か?」
問いかけると深久がうなずいた。
「綺麗・・電気いらないくらいだね」
「じゃあしばらくこのままにしようか」
「うん」
言いながら深久がテーブルの方に戻って来た。
「あ。ケーキは私が切る!お兄ちゃんが切ると曲がるんだもん」
「そんなこと言ってお前、大きい方を取る気だろ?」
「違うよ、もう」
深久はナイフにお湯をかけて温めたあと、丁寧に四等分した。面白いほど集中している。そして確かにこれは深久の方が上手い。
俺はその間カップを温めた後紅茶を注ぎ、テーブルに置く。
「チョコは私がもらう〜」
「えー俺も食べたいなあ」
抗議の声を上げると不満見え見えに渋々深久がうなずいた。
俺はぱきんと折ったチョコプレートの明らかに大きい方を深久のケーキに差してやる。
「わーい。お兄ちゃん大好き」
「単純すぎ、お前」
「いいんだもん」
目を細めてケーキを口に運ぶ深久を見ているだけで、心が温かい光に満たされる気がした。
わからなかった。
どこまでが家族愛で、どこからが愛するという気持ちなのか。
でも今は、わからなくていい。
それらを分ける必要性なんてどこにあるだろう?
愛しいと思う気持ちが確かにこの胸の内にある。それだけで充分幸せなのかもしれない。
「お兄ちゃん食べないの?」
不思議そうに深久が聞いてきて初めて、自分が長いこと彼女を見つめていたことに気づいた。
「食べるよ」
甘いクリームと清い苺の香りが幸せに彩りを添えてくれるような気がした。
「どうかな」
「んもう、はぐらかしてばっかり」
唇を尖らせ軽く深久がにらむ。
「もういいじゃん。やめようよ、その話は」
「あのね・・・」
何か言いかけて、深久は口をつぐんでしまった。
「何だよ?」
「・・ううん。ねえ、ケーキに火をつけよう」
「ああ」
俺はポケットからライターを取り出してロウソクに火を灯し、照明を落とした。
ケーキのシルエットが幻想的に浮かび上がる。
ささやかな声で歌を唄い、主役の代わりに2人でロウソクを吹き消す。
深久より沢山の数を消してやろうとハイスピードで息を吹きかけていると、深久も負けじと勢いを早めてくる。
最後の一本をお互いが奪い取るように吹いたとき前髪が触れ合い、近い距離から微笑みを交わし合った。
ロウソクの火が消えてもほの明るい光が窓から差し込んでいた。
深久もそれに気づいて窓辺に近づく。
「月か?」
問いかけると深久がうなずいた。
「綺麗・・電気いらないくらいだね」
「じゃあしばらくこのままにしようか」
「うん」
言いながら深久がテーブルの方に戻って来た。
「あ。ケーキは私が切る!お兄ちゃんが切ると曲がるんだもん」
「そんなこと言ってお前、大きい方を取る気だろ?」
「違うよ、もう」
深久はナイフにお湯をかけて温めたあと、丁寧に四等分した。面白いほど集中している。そして確かにこれは深久の方が上手い。
俺はその間カップを温めた後紅茶を注ぎ、テーブルに置く。
「チョコは私がもらう〜」
「えー俺も食べたいなあ」
抗議の声を上げると不満見え見えに渋々深久がうなずいた。
俺はぱきんと折ったチョコプレートの明らかに大きい方を深久のケーキに差してやる。
「わーい。お兄ちゃん大好き」
「単純すぎ、お前」
「いいんだもん」
目を細めてケーキを口に運ぶ深久を見ているだけで、心が温かい光に満たされる気がした。
わからなかった。
どこまでが家族愛で、どこからが愛するという気持ちなのか。
でも今は、わからなくていい。
それらを分ける必要性なんてどこにあるだろう?
愛しいと思う気持ちが確かにこの胸の内にある。それだけで充分幸せなのかもしれない。
「お兄ちゃん食べないの?」
不思議そうに深久が聞いてきて初めて、自分が長いこと彼女を見つめていたことに気づいた。
「食べるよ」
甘いクリームと清い苺の香りが幸せに彩りを添えてくれるような気がした。
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