キスの功罪

2003年4月25日
★1日100HIT越えました。ご愛読、ありがとうございます!&お詫びです。2日前の深久編「初めての、キス。」が消えていた時間帯があります。うっかり上書きしてました。ごめんなさい。もしお読みでない方いらっしゃいましたらアップし直しましたので、どーぞ。では本編スタートです★

「そう・・か?」
少なからずショックを受けて俺は本田を見た。
そんなに荒んで見えるんだろうか。
「飲み直すか?」
ぽんと俺の肩を叩いて本田は言った。
「一人でいたくないんだろ?」

場所をかえて飲んで、帰ってきたのは11時をまわっていた。
「おかえりなさ〜い」
深久はソファに座って雑誌を読んでいる。
「帰ってたんだ」
ほっとして俺はつぶやいた。
「うん。ご飯はいらなかったんだよね?」
「ああ」
深久はいつもとかわらない。
そのことが逆に気なってしまう。
「中華街行ったんだろ?」
「え・・なんで知ってるの?」
目を丸くして深久が雑誌から顔を上げた。
「本田が見たんだってさ。いちゃついてたらしいな?」
自分でも言いながら情けなくなってきた。
どうでもいいのに、こんなことは。
「うそ・・え、どこで?」
不可思議なくらいの動揺を見せて深久が顔を真っ赤にする。
不穏な気配を感じてみぞおちの辺りに不愉快な痛みがせりあがってきた。
これ以上聞かないほうがいい。
わかってる。
わかっているけど・・・醜悪な想像を止めることができない。

ふいに強い衝動が訪れた。

どうしてハルなんだ?なぜ俺じゃいけない?
こんなに長い間傍にいたのに。
ずっとお前のことだけを見てきたのに。

抱きしめてくちづけて、めちゃめちゃにしてしまいたい。

もしも誰にも触れさせていないのなら、俺以外の誰のものにもならないように。
もしも触れさせてしまっているのなら、俺がその色を塗り替えてやる。

攻撃的な感情に支配されていく。
今一歩でも深久に近づけば多分、制御できなくなる。

呼吸がうまくできない。
胸の痛みが・・消えない。

一回を閉じて大きく息を吸った。
「お兄ちゃん?」
急に黙ってしまったからだろう、不安そうな声で深久がきいてくる。
「・・ちょっと酔ったみたいだ。もう寝るわ」
なんとかその言葉だけ搾り出して俺は深久に背中を向け、歩き出した。
「大丈夫?」
深久が追いかけてきて前に回りこんだ。
「気持ち悪いの?お水いる?」
心配そうな顔で深久が俺の腕にかけようとしたその手が怖かった。
「触るな」
思いの他強い言葉が出てしまい、口にしてすぐに俺は後悔した。
差し伸べられた深久の手がびくりと止まる。
「・・・ごめん。大丈夫だから。多分ちょっと疲れてるだけだ」
俺は今、上手く笑えているだろうか?
「うん・・何かあったら呼んでね?」
「ああ、おやすみ」

コメント