沢山の感情とたったひとつの行為。
2003年4月28日心が、揺れる。
サキは理解者であり、批判者でもある。
自分をさらけ出せるという気持ちよさ、心地よさを俺は既に知ってしまっている。
いつかサキが言った事があった。
(あなたは大人の振りをし続けてる子供よ。本当の意味では成熟してないのよ)
その言葉が何よりも本質をついていた。
肩肘張って深久を守り、家を維持してきた自分。
初めて肩の荷を下ろせた場所がサキだったから。
辛いことを素直に辛いと言えた。甘えられた。
姉のような、母のような存在。
「サキ・・・サキ、俺は」
「来て。今この近くで一人暮らししてるの」
ワンルームマンションのベッドの上で2年間の空白を埋めるように互いの身体を求め合い、言葉以上の感情で語り合う。
2度交わった後、サキは煙草に火をつけ紫色の煙を立ち上らせた。
「彼氏は部屋に入れたことがないの。ホテルばっかり」
「どうして?」
「わかんないわ。イヤなの。ただそれだけ」
長いメンソールを人差し指と中指の間にはさみ、優雅な仕草で灰を落とした。
華奢な手首につけているブレスがしゃらりと音を立てる。
テレビとオーディオ、本棚、ソファ、化粧台。
作り付けのクローゼットと天然木のスプリングがないベッド。
それがサキの部屋の全てだった。
この部屋の何が俺と彼氏を選り分け、俺を選択したんだろう。
多分、その彼氏とやらは「いい人」だ。
間違いなくサキを幸せにするだろう。
なのになぜサキは、不幸になる道を選ぶんだろう?
考えながら俺は苦笑した。
俺だって同じじゃないか。
感情に損得なんて入る余地はないのだ。
ただ、欲しいだけ。
「深久さんだと思いながら抱いてもいいのよ」
煙草を消してサキはシーツにくるまった。
「罪悪感だとか私に悪いとかそんな余計なものは全部捨てて。欲しいと思うままに抱いて。私はそういう中山君が欲しいの」
3度目は愛に満ち溢れたキスを身体中に散らし、髪の先から足指まで愛撫して、何度も甘い言葉をささやいた。
サキの中に今まで以上に大きなうねりが訪れ、いつまでもそれがとどまっているのがわかる。
彼女は本当にそれを望んでいるんだと思った。
深久の代わりに愛されることを。
「サキ・・・」
吐息と共に名前を呼ぶとサキはやめないで、と喘ぎの合間に唇をせがんでくる。
それに応えながら俺は今どんな瞬間よりも深久が欲しいと思った。
「中山君、中山君・・ああ」
温かいサキに包まれていると津波のような錯覚に襲われる。
愛され、内包されているような錯覚。
それは俺の血を誘い、たぎらせ、感情を一点に集めて上手く絞り上げる。
俺自身の中にもうねりが生まれていた。
深久・・・!
心の中で叫びながら、その中に呑み込まれていくのを感じていた。
「今日はここから出勤?」
時計は3時を回っている。
「いや・・一回帰るよ」
「いいじゃない、ここで眠れば。ちゃんと起こしてあげるわよ?」
泥のような眠気は確かにまぶたの上を覆いつくしていた。
こんなにも沢山の感情を飲み込んで吐き出したのはいつ以来だろう?
心地よい眠りが迫っていた。
「じゃあソファ貸してくれよ。俺はそっちで・・・」
「何よ今更。ばかね、ここで眠りなさい」
サキが隣に滑り込んでくる。
温かい。
昔飼っていた子犬と一緒に布団に入ったことがふいに思い出された。
あの犬はどうしたっけ・・・?
「そういえば中山君、昔から泊まっていったこと、なかったわね・・・」
サキの声が子守唄のように遠ざかっていった。
サキは理解者であり、批判者でもある。
自分をさらけ出せるという気持ちよさ、心地よさを俺は既に知ってしまっている。
いつかサキが言った事があった。
(あなたは大人の振りをし続けてる子供よ。本当の意味では成熟してないのよ)
その言葉が何よりも本質をついていた。
肩肘張って深久を守り、家を維持してきた自分。
初めて肩の荷を下ろせた場所がサキだったから。
辛いことを素直に辛いと言えた。甘えられた。
姉のような、母のような存在。
「サキ・・・サキ、俺は」
「来て。今この近くで一人暮らししてるの」
ワンルームマンションのベッドの上で2年間の空白を埋めるように互いの身体を求め合い、言葉以上の感情で語り合う。
2度交わった後、サキは煙草に火をつけ紫色の煙を立ち上らせた。
「彼氏は部屋に入れたことがないの。ホテルばっかり」
「どうして?」
「わかんないわ。イヤなの。ただそれだけ」
長いメンソールを人差し指と中指の間にはさみ、優雅な仕草で灰を落とした。
華奢な手首につけているブレスがしゃらりと音を立てる。
テレビとオーディオ、本棚、ソファ、化粧台。
作り付けのクローゼットと天然木のスプリングがないベッド。
それがサキの部屋の全てだった。
この部屋の何が俺と彼氏を選り分け、俺を選択したんだろう。
多分、その彼氏とやらは「いい人」だ。
間違いなくサキを幸せにするだろう。
なのになぜサキは、不幸になる道を選ぶんだろう?
考えながら俺は苦笑した。
俺だって同じじゃないか。
感情に損得なんて入る余地はないのだ。
ただ、欲しいだけ。
「深久さんだと思いながら抱いてもいいのよ」
煙草を消してサキはシーツにくるまった。
「罪悪感だとか私に悪いとかそんな余計なものは全部捨てて。欲しいと思うままに抱いて。私はそういう中山君が欲しいの」
3度目は愛に満ち溢れたキスを身体中に散らし、髪の先から足指まで愛撫して、何度も甘い言葉をささやいた。
サキの中に今まで以上に大きなうねりが訪れ、いつまでもそれがとどまっているのがわかる。
彼女は本当にそれを望んでいるんだと思った。
深久の代わりに愛されることを。
「サキ・・・」
吐息と共に名前を呼ぶとサキはやめないで、と喘ぎの合間に唇をせがんでくる。
それに応えながら俺は今どんな瞬間よりも深久が欲しいと思った。
「中山君、中山君・・ああ」
温かいサキに包まれていると津波のような錯覚に襲われる。
愛され、内包されているような錯覚。
それは俺の血を誘い、たぎらせ、感情を一点に集めて上手く絞り上げる。
俺自身の中にもうねりが生まれていた。
深久・・・!
心の中で叫びながら、その中に呑み込まれていくのを感じていた。
「今日はここから出勤?」
時計は3時を回っている。
「いや・・一回帰るよ」
「いいじゃない、ここで眠れば。ちゃんと起こしてあげるわよ?」
泥のような眠気は確かにまぶたの上を覆いつくしていた。
こんなにも沢山の感情を飲み込んで吐き出したのはいつ以来だろう?
心地よい眠りが迫っていた。
「じゃあソファ貸してくれよ。俺はそっちで・・・」
「何よ今更。ばかね、ここで眠りなさい」
サキが隣に滑り込んでくる。
温かい。
昔飼っていた子犬と一緒に布団に入ったことがふいに思い出された。
あの犬はどうしたっけ・・・?
「そういえば中山君、昔から泊まっていったこと、なかったわね・・・」
サキの声が子守唄のように遠ざかっていった。
コメント