夢と現実の境界線

2003年5月3日
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お兄ちゃんにきゅうって抱きしめられてる間、ほっとする気持ちと身体のだるさと、帰らなかったことを責めたい気持ちがごちゃ混ぜになって涙が出てしまった。
それから・・気になってしょうがない事がある。
何度も聞こうと思った。

どこにいたの?って。

多分、彼女がいないなんてやっぱり嘘で、誰かと一晩過ごしたんだろうな。
私のことなんかすっかり忘れて。
そう考えると胸がぎゅって苦しくなる。
まるで・・やきもちを焼いてるみたい。
おもちゃを取り上げられた赤ちゃんみたいに、私はいつまでもいつまでも、泣いていた。

もしかしたら。
お兄ちゃんはサキさんといたのかもしれない。
お洋服にほのかに染み付いた香りはサキさんと付き合ってた頃よく持ち帰ってきたのと同じだったから。
別れたんじゃなかったのね・・・?

ああ、またやきもちだ。

朦朧とする意識の合間に、お兄ちゃんが冷たいタオルを当ててくれるのを感じていた。
昔から私が熱を出すとお兄ちゃんはこうして優しく看病してくれたっけ。
今だけは、独占できる。
それがなんだか嬉しくて仕方なくて、また少し泣けてしまった。
こんな風に構ってもらえるんならちょっと位苦しくってもいいかな。
でもきっと今だけだよね・・・?
思考が同じところをぐるぐるぐる回る。

ふいに心臓がとくり、と音をたてる。
私の目元にやわらかい物があてられた。
微かにかかる吐息のせいで、それはお兄ちゃんの唇だと、わかった。
夢?
今私は夢の中にいるのかな・・
それにしてはリアルな・・
小さく小さく、お兄ちゃんの声が降ってきた。

ごめん・・・愛してるよ、と。

なんて都合のいい夢。
私は私を癒すために、こんな夢を見てるのかな?
ずっと言い続けて欲しい。
一番大切なのは深久だよ、とか。
その時、そっと額のタオルが取り払われ、取り替えられるその冷たさに驚いてしまった。
これは現実?
だとしたら、愛してるってどういう意味?
家族として?でも・・でもそれってあまりにもそぐわない。

・・・わからない。
目を開けてみたい。でも開けられない。
やっぱり夢?それとも現実・・・?



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