(σ・∀・)σ50ゲッツ!

しばらくそうしてぼうっと冷蔵庫にもたれかかっていた。
涙がにじんでくるのがわかる。
最近涙腺が弱いなあ。
しかも全部、お兄ちゃんがらみだ。
あんなに優しく大切にしてもらってるのに、私は一体なにが不満なんだろう?
どうして涙が出てきちゃうんだろう。
バカみたいだな、私。
涙がこぼれそうになった時、玄関の方からこつこつと足音が聞こえてきて、どきりとした。
まさか・・・?でもあの音。
お兄ちゃんのはず、ない。
だけど予想通り足音はドアの前で止まり、鍵が開く音がする。
私の頭は軽いパニックを起こしていた。驚きと嬉しさがごちゃまぜになって。
「ただいま」
「どうして帰ってきたの・・?」
「帰ってきちゃわりーかよ」
「悪くない、けど・・・」
戸惑いながら私はさっきのことを思い出していた。
「約束だからな」
お兄ちゃんが煙草をテーブルの上に放り出して言った。
「あ・・・」
喜びが、こみあげてくる。
それって彼女さんより私を優先させてくれたってこと、だよね・・?
さっきまでのどうしようもない疎外感が追いやられ、胸の痛みが修復されていく。
お兄ちゃんのこと縛ってるのを申し訳ないと思う以上に私の感情はわがままみたいだ。
「・・お前そんなトコでなにやってるの?」
はっと自分の居場所を思い出した。
さっきまでお兄ちゃんが座り込んでいた冷蔵庫の前でへたりこんでるなんてどう考えても不自然だよね・・・
見抜かれた?私のコドモみたいな気持ち。
かあっと顔に血がのぼり、思わず両手で頬を押さえた。
「あれ・・お前もしかして泣いてた?」
近づいてきてお兄ちゃんが隣にひざまずいた。
私は必死に首を振った。なんでそんなことまで見抜いちゃうのよ?
恥ずかしくて顔が見れない・・。
「ハルとケンカでもしたのか?」
優しく降り注ぐ声。
「だから、泣いてないってば」
「あのね、俺にはわかるの。何年つきあってると思ってるんだ、この意地っ張り」
頭を軽くどつかれてしまった。
なんかいつものお兄ちゃんだ・・・。
「いじめられたのか?言えよ、お兄ちゃんに」
そう言いながら私の頭をぽんぽんと撫でるように優しく叩く。
「ばかね・・・もう小学生じゃないんだから」
小さい頃はよくそんなことがあったっけ。
哀しいことや悔しいことがあれば真っ先にお兄ちゃんに話した。
大抵のことは一日眠れば忘れちゃうような他愛の無い理由だったけど、どんなことでも真剣に、時に混ぜっ返しながら聞いてくれたお兄ちゃんの存在は他の誰よりも大きかった。
そんな時よくこうして頭をぽんぽんって叩いて励ましてくれたんだよね。
この手はいつも、私ひとりのものだった。
急速に、切なくなる。
いつからこの手は痛みを与える存在になっちゃったの・・?

泣きそうな気持ちをこらえるため、私はわざと怒った顔を作った。
「大体どうしてお兄ちゃん、おうちであんなことしてたわけ?大迷惑よ?そりゃ私も昨日は悪かったなって思ってるけど・・」
「一人じゃいられなかったんだよ」
ぽつりと、お兄ちゃんが言った。
思ってもみない答えが返ってきて、私はよくわからなくなってしまった。
「それってどういう・・・?」
言いながら、どきんとしてしまった。
それって・・・そのまんまの意味?
「お前が早く帰ってくるからだろ。ハルはどうしたんだよ?」
「あ・・うん。昨日のことあやまろうかなって思ってたんだけど・・・ちょっと怖くなっちゃって」
「怖い?ハルが?」
「うん」
「・・・やっぱり一発殴っとく?」
「あ、違うの、これは私の問題。ハル君のせいじゃなくて・・・」
「・・・いつもあいつをかばうんだな」
「え?」
「俺シャワー浴びてくるよ。雨で濡れたままなんだ」
そう言ってとっとと立ち上がってお兄ちゃんはバスルームに消えてしまった。
何だか今日のお兄ちゃんは、やっぱりヘンな気がする。
まるで・・・まるで、ハル君を妬いてるみたい。
まさか・・ね。

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