「早く二人きりになりたい」〜お前のそれは俺と同じものなのか?〜
2003年5月31日(σ・∀・)σ31ゲッツ!
事態が高速回転で動き出したように思える。
俺はかろうじて立っていられるほどの狭いウィークリーマンションのベランダに出て煙草に火をつけた。
駅前のごみごみした景色が眼下に広がる。
ほこりっぽい排気ガスのにおいを避けるように俺は壁にもたれかかった。
明日深久に会う・・・。
深久の言葉が耳の奥で熱をもって何度も繰り返される。
本田に言われた時はにわかに信じられなかった。
自分の想いは否定される。
そう思い込んできた自分にとっては青天のへきれきってやつだ。
けれど深久は心が動いたと言った。
それは何を意味するのだろう?
吐く息が白い。
煙草の煙と交じり合い、澱んだ空に立ち上ってゆく。
深久・・・。
今すぐ駆けつけて抱き締めたい。すぐにでも結論が欲しい。
そしてその真意を問いただしたい。
お前のそれは俺と同じものなのか、と。
「せんせ」
廊下を歩いているとカナコがVサインを作りながら歩いてきた。
「もういっこの私大も受かっちゃった。ね、お祝いしてよ。ケーキ食べたい!」
「あのね・・この前おごったでしょ?それに生徒が受かる度いちいちごちそうしてたら俺の財布は空になります」
「あ・・そういう意地悪言っていいと思ってんのー?」
甘えた口調でカナコが腕を絡めてくる。
やんわりとふりほどいて俺は小脇に抱えていた教科書で軽く頭を叩いた。
「場所を考えろよ。結構教員室でイヤミ言われてるんだぜ、俺」
「じゃあ場所かえたらそういうことしていい?」
あどけない表情をわざとらしくなく作り込み、カナコが覗いてくる。
「いいわけねえだろ。じゃあね」
「つめたあい」
言いながらカナコが俺の前に回りこんで、俺だけに聞こえるよう小さな声で囁いてくる。
「この前帰り際、キスしてくれたこと言いふらすよ?」
「してないだろ?」
「あれ?場所はどこでもキス、なんでしょ?」
ヒトを食ったような笑みでカナコが勝ち誇ったように言い放った。
「・・・キミは俺をクビにさせたいの?」
「やだなあ、デートしてほしいだけだよぉ」
「・・わかった。そのうちね。でも今日は駄目。人と会う予定があるから」
「女の人?」
「関係ないでしょ、ほいどいたどいた」
不平そうに唇を尖らすカナコを置き去りにして、俺は腕時計を見た。
案の定、8時を大幅にまわっている。
いつもより質問の生徒が多かったせいで手間取ってしまった。
まだこの後整理しなければならない書類も2〜3ある。
一度深久に電話を入れておこうと思い、いつも煙草を吸う階段の踊り場へ向かった。
この建物は相変わらず電波が悪い。繋がっても途切れ途切れになってしまう。
授業中生徒がメールできない環境はよいのだけれど、こういう時に不便で仕方ない。
俺はもどかしくて、歩きながらダイアルした。
2回ほど呼び出し音が鳴っただけですぐにつながった。
(終わった?)
昨日より格段に明るい深久の声が飛び込んでくる。
「いや・・まだなんだ。悪いな、あと30分くらいかかりそうなんだけどどうする?」
喋りながら俺はようやく踊り場へ出た。夜風がひんやりと頬をなでる。
(あのね、遅いから・・・来ちゃった)
「は?」
(今予備校の裏門の前)
俺は裏門の方を見た。
ぼんやりと街頭のあかりに照らされている辺りに深久の姿を認めると、俺は手を挙げた。
「正面の3階の端、見て」
(え・・・?あ!)
薄暗がりの中でもはっきりと深久の笑顔がわかる。
大きく手を振ってくる。
胸の奥を射抜くような明るい、笑顔。
「駐車場わかる?」
深久を見つめたまま携帯で話しかけた。
(うん)
見えるサイズとすぐ耳元に聞こえる声の大きさのギャップが不思議な感覚を喚起させる。
「車の中で待ってろよ。ちょっと寒いかもしんないけどな」
俺は車のキーをポケットから出すと、ゆるいカーブを描いて深久に放った。
(きゃ、あーあ)
受け損なって深久の手を一回バウンドした鍵はちゃらりと音を立ててレンガ敷きの地面の上に落ちた。
深久が急いでそれを拾い上げる。
「どーじ。」
「ひっどい・・」
からかう俺の口調に返す言葉とは裏腹に、深久の頬から笑みは消えることがない。
締め付けられる程の甘やかな痛みがせりあがる。
こころの底から愛しいと思う。はやく二人きりになりたい。
それをねじ伏せるように俺は、じゃあまた後で、と手を振った。
カナコがそれを見ていることには・・・気付かなかった。
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日常日記が凄いことになってます。ありえねえ・・・。
http://members.tripod.co.jp/raita_/index-2.html ★
事態が高速回転で動き出したように思える。
俺はかろうじて立っていられるほどの狭いウィークリーマンションのベランダに出て煙草に火をつけた。
駅前のごみごみした景色が眼下に広がる。
ほこりっぽい排気ガスのにおいを避けるように俺は壁にもたれかかった。
明日深久に会う・・・。
深久の言葉が耳の奥で熱をもって何度も繰り返される。
本田に言われた時はにわかに信じられなかった。
自分の想いは否定される。
そう思い込んできた自分にとっては青天のへきれきってやつだ。
けれど深久は心が動いたと言った。
それは何を意味するのだろう?
吐く息が白い。
煙草の煙と交じり合い、澱んだ空に立ち上ってゆく。
深久・・・。
今すぐ駆けつけて抱き締めたい。すぐにでも結論が欲しい。
そしてその真意を問いただしたい。
お前のそれは俺と同じものなのか、と。
「せんせ」
廊下を歩いているとカナコがVサインを作りながら歩いてきた。
「もういっこの私大も受かっちゃった。ね、お祝いしてよ。ケーキ食べたい!」
「あのね・・この前おごったでしょ?それに生徒が受かる度いちいちごちそうしてたら俺の財布は空になります」
「あ・・そういう意地悪言っていいと思ってんのー?」
甘えた口調でカナコが腕を絡めてくる。
やんわりとふりほどいて俺は小脇に抱えていた教科書で軽く頭を叩いた。
「場所を考えろよ。結構教員室でイヤミ言われてるんだぜ、俺」
「じゃあ場所かえたらそういうことしていい?」
あどけない表情をわざとらしくなく作り込み、カナコが覗いてくる。
「いいわけねえだろ。じゃあね」
「つめたあい」
言いながらカナコが俺の前に回りこんで、俺だけに聞こえるよう小さな声で囁いてくる。
「この前帰り際、キスしてくれたこと言いふらすよ?」
「してないだろ?」
「あれ?場所はどこでもキス、なんでしょ?」
ヒトを食ったような笑みでカナコが勝ち誇ったように言い放った。
「・・・キミは俺をクビにさせたいの?」
「やだなあ、デートしてほしいだけだよぉ」
「・・わかった。そのうちね。でも今日は駄目。人と会う予定があるから」
「女の人?」
「関係ないでしょ、ほいどいたどいた」
不平そうに唇を尖らすカナコを置き去りにして、俺は腕時計を見た。
案の定、8時を大幅にまわっている。
いつもより質問の生徒が多かったせいで手間取ってしまった。
まだこの後整理しなければならない書類も2〜3ある。
一度深久に電話を入れておこうと思い、いつも煙草を吸う階段の踊り場へ向かった。
この建物は相変わらず電波が悪い。繋がっても途切れ途切れになってしまう。
授業中生徒がメールできない環境はよいのだけれど、こういう時に不便で仕方ない。
俺はもどかしくて、歩きながらダイアルした。
2回ほど呼び出し音が鳴っただけですぐにつながった。
(終わった?)
昨日より格段に明るい深久の声が飛び込んでくる。
「いや・・まだなんだ。悪いな、あと30分くらいかかりそうなんだけどどうする?」
喋りながら俺はようやく踊り場へ出た。夜風がひんやりと頬をなでる。
(あのね、遅いから・・・来ちゃった)
「は?」
(今予備校の裏門の前)
俺は裏門の方を見た。
ぼんやりと街頭のあかりに照らされている辺りに深久の姿を認めると、俺は手を挙げた。
「正面の3階の端、見て」
(え・・・?あ!)
薄暗がりの中でもはっきりと深久の笑顔がわかる。
大きく手を振ってくる。
胸の奥を射抜くような明るい、笑顔。
「駐車場わかる?」
深久を見つめたまま携帯で話しかけた。
(うん)
見えるサイズとすぐ耳元に聞こえる声の大きさのギャップが不思議な感覚を喚起させる。
「車の中で待ってろよ。ちょっと寒いかもしんないけどな」
俺は車のキーをポケットから出すと、ゆるいカーブを描いて深久に放った。
(きゃ、あーあ)
受け損なって深久の手を一回バウンドした鍵はちゃらりと音を立ててレンガ敷きの地面の上に落ちた。
深久が急いでそれを拾い上げる。
「どーじ。」
「ひっどい・・」
からかう俺の口調に返す言葉とは裏腹に、深久の頬から笑みは消えることがない。
締め付けられる程の甘やかな痛みがせりあがる。
こころの底から愛しいと思う。はやく二人きりになりたい。
それをねじ伏せるように俺は、じゃあまた後で、と手を振った。
カナコがそれを見ていることには・・・気付かなかった。
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