「ほんとに兄妹?」〜お兄ちゃんが抱こうとしてた人〜
2003年6月1日(σ・∀・)σ65ゲッツ!
鍵がいっこ増えてる・・・。
うちとはちょっと違うデザインのシリンダーキー。
今住んでる所のかな。
胸がとくんと音を立てた。
私の知らないところでのお兄ちゃんの生活。
この鍵にはそれが詰まってる。
どこに住んでるんだろう・・・。
最初は本田さんの所か、車で寝泊りしてるのかと思ってた。
でも本田さんはこの前驚いてたし、車じゃお風呂も入れないし。
第一どこに駐車して生活できるっていうのか。
やっぱり女の人のところ・・・?
サキさんとか・・それとも他の人?まさかあの高校生とは住まないよね?
胸がざわざわする・・・。
なに考えてるんだろ、私。
鍵ひとつで色々考えちゃう自分がばかみたいだった。
数台しか止まってない駐車場に入るとお兄ちゃんの車はすぐに見つかった。
車に向かって歩きかけた時だった。
「中山深久さん、ですよね?」
「はい・・・?」
女の子の声が後ろから聞こえた。
あまりにも突然だったので間の抜けた声で私は返事し、反射的に振り返る。
・・・あの人だ。
例の、高校生。
お兄ちゃんとキスしてた人。お兄ちゃんが抱こうとしてた人。
「ねえ、少しお話しない?ずっと深久さんと話してみたかったの、あたし」
イヤだった。
この人を見てると自分の汚い部分を突きつけられているようで、辛い。
「寒いから車に乗ろ」
女の子は返事を聞かず私の手から車のキーを取ると勝手に乗り込んだ。
「あたしは沢木カナコ。ここの生徒で、高3。よろしくね?」
カナコと名乗ったその美人さんはにっこりと微笑んだ。私も何とか笑いかえす。
「あのね、深久さんに聞きたいことがあるの」
「なに?」
「せんせいと、ほんとに兄妹?」
一瞬眩暈のような感覚に襲われた。
どうしてこの人はそんなこと聞くんだろう?
ずっと昨日まで私が考え続けていたことを。
「兄妹よ、どうして?」
「今日デートしようってせんせいに言ったら断られたから、他の人とデートするのかなってちょっと心配してたの。でも深久さんと出かける予定だったのね?」
戸惑いを隠しながら頷いて私はずきずきと疼く胸の辺りを軽く押さえた。
デート、ね。
カナコはそれに気付かず、嬉しそうにハンドルを握りながら、言った。
「そうよね。深久さんとせんせい、似てるし」
「似てる・・・?」
考えてもみなかった一言が、心をえぐる。
「似てるわよ、全体の雰囲気とか。深久さんの方が優しい感じだけどね」
そう、こんなにも繋がった存在なんだ。
くらくらした。
涙がにじんでくる。
だめだ、変に思われちゃう。私は必死でこらえ、笑顔を貼り付けた。
「ねえ、お願いがあるんだけど・・・」
「なんですか?」
必要以上に潤んでいる目をうつむいて隠し、私は聞き返した。
カナコさんがハンドルにもたれかかって顔だけをこちらに向ける気配がした。
「今日のせんせいをあたしにゆずってほしいの」
「え?」
驚いて私は顔を上げた。
「今日はあたしにとってトクベツな日なの。誕生日なんだ」
「え・・・っと」
そう言われても困ってしまう。私自身にとっても特別な日なのに。
やっとお兄ちゃんに会えた。
言いたいことも聞きたいことも山積してる。ゆずれと言われてゆずれるものではない。
でも・・・
さっき言われたことが私の中でまだ渦巻いてる。
そんなに似てるのかな、私達。やっぱりお兄ちゃんにとってはこの人の方がお似合いなんだろうか。
「でも・・あの、私も今日お兄ちゃんと話があって・・」
そう言うとカナコは不思議そうに首をかしげた。
「家で話せばいいじゃない?」
お兄ちゃんはこの人に言ってないんだ。
それはそうかもしれない。本田さんですら、知らなかった。
「そうなんですけど・・・」
「じゃあいいよね?お願い!」
真剣な表情でカナコさんが覗き込んでくる。
「お兄ちゃんのこと、好きなんですね・・」
ぽろりと口に出してしまった。でもそれは本音だった。
カナコさんは目を2・3回しばたたかせてからうん、好きよ、と言った。
「だから今日くらいは一緒にいたいの。わかるでしょ?」
結局私は折れてしまった。
お兄ちゃんに電話したいと思ったけれど、仕事だと言っていた。繋がるかどうかわからない。
本当は・・・カナコさんに負けたと思った。
あんなにも一生懸命で、お兄ちゃんを好きだとあっさり認めて。
勝てる気がしない。
帰ろう。
また、一人の夜だ。
でも今日は仕方ないと思う。自分で選んだことだから。
もしかしたら、お兄ちゃんが出て行ったのはよかったのかもしれない。
そうすればカナコさんとお兄ちゃんが付き合ってるとこ、見なくて済むし。
そう考えてから私は愕然とした。
お兄ちゃんも同じなんじゃない?
私とハル君を、見ていたくなくて。
そっか・・・
知らなかったとはいえ、ひどいことしてたのかもしれない。
だってそれはこんなにも苦しい・・・。
もうお兄ちゃんとは会えないかもしれない。
その覚悟はなかなか決まらず、私はシャッターの降りたハンズの前でため息をついた。
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鍵がいっこ増えてる・・・。
うちとはちょっと違うデザインのシリンダーキー。
今住んでる所のかな。
胸がとくんと音を立てた。
私の知らないところでのお兄ちゃんの生活。
この鍵にはそれが詰まってる。
どこに住んでるんだろう・・・。
最初は本田さんの所か、車で寝泊りしてるのかと思ってた。
でも本田さんはこの前驚いてたし、車じゃお風呂も入れないし。
第一どこに駐車して生活できるっていうのか。
やっぱり女の人のところ・・・?
サキさんとか・・それとも他の人?まさかあの高校生とは住まないよね?
胸がざわざわする・・・。
なに考えてるんだろ、私。
鍵ひとつで色々考えちゃう自分がばかみたいだった。
数台しか止まってない駐車場に入るとお兄ちゃんの車はすぐに見つかった。
車に向かって歩きかけた時だった。
「中山深久さん、ですよね?」
「はい・・・?」
女の子の声が後ろから聞こえた。
あまりにも突然だったので間の抜けた声で私は返事し、反射的に振り返る。
・・・あの人だ。
例の、高校生。
お兄ちゃんとキスしてた人。お兄ちゃんが抱こうとしてた人。
「ねえ、少しお話しない?ずっと深久さんと話してみたかったの、あたし」
イヤだった。
この人を見てると自分の汚い部分を突きつけられているようで、辛い。
「寒いから車に乗ろ」
女の子は返事を聞かず私の手から車のキーを取ると勝手に乗り込んだ。
「あたしは沢木カナコ。ここの生徒で、高3。よろしくね?」
カナコと名乗ったその美人さんはにっこりと微笑んだ。私も何とか笑いかえす。
「あのね、深久さんに聞きたいことがあるの」
「なに?」
「せんせいと、ほんとに兄妹?」
一瞬眩暈のような感覚に襲われた。
どうしてこの人はそんなこと聞くんだろう?
ずっと昨日まで私が考え続けていたことを。
「兄妹よ、どうして?」
「今日デートしようってせんせいに言ったら断られたから、他の人とデートするのかなってちょっと心配してたの。でも深久さんと出かける予定だったのね?」
戸惑いを隠しながら頷いて私はずきずきと疼く胸の辺りを軽く押さえた。
デート、ね。
カナコはそれに気付かず、嬉しそうにハンドルを握りながら、言った。
「そうよね。深久さんとせんせい、似てるし」
「似てる・・・?」
考えてもみなかった一言が、心をえぐる。
「似てるわよ、全体の雰囲気とか。深久さんの方が優しい感じだけどね」
そう、こんなにも繋がった存在なんだ。
くらくらした。
涙がにじんでくる。
だめだ、変に思われちゃう。私は必死でこらえ、笑顔を貼り付けた。
「ねえ、お願いがあるんだけど・・・」
「なんですか?」
必要以上に潤んでいる目をうつむいて隠し、私は聞き返した。
カナコさんがハンドルにもたれかかって顔だけをこちらに向ける気配がした。
「今日のせんせいをあたしにゆずってほしいの」
「え?」
驚いて私は顔を上げた。
「今日はあたしにとってトクベツな日なの。誕生日なんだ」
「え・・・っと」
そう言われても困ってしまう。私自身にとっても特別な日なのに。
やっとお兄ちゃんに会えた。
言いたいことも聞きたいことも山積してる。ゆずれと言われてゆずれるものではない。
でも・・・
さっき言われたことが私の中でまだ渦巻いてる。
そんなに似てるのかな、私達。やっぱりお兄ちゃんにとってはこの人の方がお似合いなんだろうか。
「でも・・あの、私も今日お兄ちゃんと話があって・・」
そう言うとカナコは不思議そうに首をかしげた。
「家で話せばいいじゃない?」
お兄ちゃんはこの人に言ってないんだ。
それはそうかもしれない。本田さんですら、知らなかった。
「そうなんですけど・・・」
「じゃあいいよね?お願い!」
真剣な表情でカナコさんが覗き込んでくる。
「お兄ちゃんのこと、好きなんですね・・」
ぽろりと口に出してしまった。でもそれは本音だった。
カナコさんは目を2・3回しばたたかせてからうん、好きよ、と言った。
「だから今日くらいは一緒にいたいの。わかるでしょ?」
結局私は折れてしまった。
お兄ちゃんに電話したいと思ったけれど、仕事だと言っていた。繋がるかどうかわからない。
本当は・・・カナコさんに負けたと思った。
あんなにも一生懸命で、お兄ちゃんを好きだとあっさり認めて。
勝てる気がしない。
帰ろう。
また、一人の夜だ。
でも今日は仕方ないと思う。自分で選んだことだから。
もしかしたら、お兄ちゃんが出て行ったのはよかったのかもしれない。
そうすればカナコさんとお兄ちゃんが付き合ってるとこ、見なくて済むし。
そう考えてから私は愕然とした。
お兄ちゃんも同じなんじゃない?
私とハル君を、見ていたくなくて。
そっか・・・
知らなかったとはいえ、ひどいことしてたのかもしれない。
だってそれはこんなにも苦しい・・・。
もうお兄ちゃんとは会えないかもしれない。
その覚悟はなかなか決まらず、私はシャッターの降りたハンズの前でため息をついた。
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