(σ・∀・)σ35ゲッツ!

頑固なんだから、もう。
いつでもお兄ちゃんは先の先まで見通して行動する。
いつも理性的で、自分を抑えて。
そんな態度が少しもどかしかった。
つい張らなくてもいい意地で言ってしまった言葉を後悔もしていた。

人から認められることが恋愛じゃない。そう、そんなことはわかってる。
一生この人のそばにいるためには、隠し通す以外ないことも。
だけど、お母さんにはばれてしまうと思う。
勘の鋭さは動物的だから。
そうなってしまう前に、自分から言った方がいいような気がする。
どうせ勘ぐられるくらいなら。

ふと部屋の片隅に置いてある姿見が目に入り、近づいてみた。
少ししかめっつらで泣きそうな自分がこちらをにらんでいる。
そっと鏡に手を伸ばすとさっきまでの自分が鮮やかに蘇った。
もしあのまま電話がこなかったら、きっとお兄ちゃんに抱かれていた。
そう思いついたとたん、カッと身体が熱くなった。
首筋に紅いキスマークが浮かんでいる。
鏡の中の自分が慌ててそこに手をやった。
頬にも血がのぼっているのを感じ、目をそらしてしまう。
どうなってたかな・・・。
ハル君のことは拒絶したこの身体は、お兄ちゃんのことは素直に受け入れてくれたんだろうか。
自分でも、わからない。
けれど性急にならないお兄ちゃんの愛撫は確かに私の心を柔らかく解きほぐし、全てをゆだねていた。
明らかに、待ち構えていた。
その時がくるのを。
繋がりたい、そう思ったのは初めてだった。
傍にいるともっともっと知りたくなる。
今まで知っていたお兄ちゃんは、表の一部だったことを知る。
貪欲な心がわき上がってくる・・・。
近づきたい、もっと。

他の誰かがお兄ちゃんを見つめるのもいや。
離れている時が怖い。
カナコさんみたいなヒトがまた現れたらどうしよう。
自分じゃ太刀打ちできないかもしれない。
兄妹である以上の繋がりが、今の私達にはないから・・。
不安が心を満たしていく。
どうしたらこの揺れを止めることができるだろう?

そばにいたいのに。

意地張って部屋を出たりなんかしなければよかった・・・。
明日からはしばらくはもう、あんな風に抱きしめてもらえることもないのに。
「わたし、ばか・・・」
ベッドに倒れこむようにうつぶせに寝ると枕を抱きしめた。

お母さんが、帰ってくる。
電話では月に1〜2回話すのだけれど、会うのは何年振りだろう。
癌?ほんとに?
信じられなかった。
地雷で片足を失っても精力的に写真を撮り続けて世界中を飛び回っている。
今までに病気らしい病気などしたことがなかったのに。
電話口でのお母さんの口ぶりは明るいものだった。
きっと・・悲観するほど悪くはないのだろう。
ごちそうを、作ってあげよう。
和食にしようか。きっと久しく食べてないだろうから。
私の心は少しだけ浮き立った。話したい事が山ほどある。
ハル君と別れたことを言ったらやっぱり理由を聞かれるかな。
どんな風に話そうか・・・。

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